2011年7月29日
日本弁護士連合会会長 宇都宮健児 様
東京都国立市東3−17−11好日荘B−202
共同親権運動ネットワーク
日々、法曹実務の向上に努力されておりますこと、ありがとうございます。
これまで、私たち子どもと引き離された親たちにとって、法律家たちの常識や慣行によ
って、親子関係を絶たれたり、子どもに会うのを著しく制約されたりすることが常態でし
た。それに対する多くの弁護士の説明が、「そういうものだから」というものでした。
ここ最近、共同親権運動ネットワークには、こういった相談が寄せられています。
ある母親は、夫に子どもを連れ去られ、夫の弁護士から電話がかかってくると、連れ戻
せば刑事罰に問われると指摘されました。ある父親は、妻の弁護士からの電話で、親権と
監護権を分け、親権を譲る代わりに金銭を請求されました。また別のケースでは、離婚調
停時、離婚後の子どもに養育にかかる費用が両親間で話し合われる際、「子どもの意見」と
して必要な額を子どもを連れ去られた父親に伝えてくる弁護士もいました。さらに、月に
1度の面会交流の約束で離婚したにもかかわらず、妻の側が約束を守らないので再調停し
た父親は、相手方に新しくついた弁護士の、面会の回数を年3回に減らすという提案に直
面しました(すべて実名を把握しています)。こういった詐欺行為の上書きは弁護士の中で
も常套手段なのか、度々耳にします。この父親はもう5年以上子どもとの面会を求め続け
ています。困難にもかかわらず、子どものために諦めない親たちに対する法律家たちの扱
いがこういうものかと思うと残念でなりません。とても冷たいと感じるとともに、弁護士
たちに対する信頼を著しく落とすものと私たちは思います。
現在でも、子どもとの面会を離婚や金品との取引材料にする「人質弁護」行為は消えて
いません。自分たちの営業成績を上げるために事件を作り出していると言われても仕方
ないのではないでしょうか。
離婚と子どもの養育の問題が分けられず、力関係で物事が決まる家裁のあり方はこうい
った弁護士の方々の行為を促します。しかし親子の引き離し行為が親子それぞれの権利を
著しく侵害する行為であるとの認識に立てば、制度が不備であるからこそ、法律家として
やるべきことは見えてくるはずです。
去る5月27日に、「面会及びその他の交流」について明文化した民法改正案が国会に
て成立しました。今、民法が変わったその意味は、これまで繰り返されてきた、主に離婚
をきっかけとして親子が引き離されるという関係に、民意がNOを突きつけていることに
他なりません。共同親権運動ネットワークは、過去、「国際的な子の奪取の民事面に関す
るハーグ条約」についての質問状も含め、度々日弁連に対して質問状を提出しましたが、
一度も誠意ある回答は得られませんでした。
ハーグ条約に関する議論では、国際離婚について面会交流と子の返還についてのルール
整備を促すものとして国内の問題にも影響することは周知の通りです。この条約について
日弁連は加盟に反対していません。しかし、担保法についての日弁連の意見は「どうやっ
たら返還しなくてすむか」という点に集中し、「どうやったら双方の親子との接触が維持
できるか」について担保する議論がなされているとは思えません。国際的にも背信行為と
して日本の弁護士たちは将来批判されるのではないでしょうか。
問題は国際結婚の問題ではなく、結婚と親子関係が存在する限り、親や子と会えなくな
るかもしれないという点で、すべての人に関係あることです。弁護士も含めた法律家のみ
なさまの「まるで他人事」であるかのような議論を私たちは理解することができません。
自分に子どもがいた場合には、「私たちが別れたら、お父さん(あるいはお母さん)と会
えなくなっても我慢するのよ」と、常日頃から法律家のみなさまは自分のお子さんに教育
されているのでしょうか。そうでなければ、法律家の皆様の業界の常識があまりにも世間
とかけ離れていると思わざるを得ません。
以上指摘の上、以下要望します。
要望項目
1.質問状や要望書の提出に対して、窓口の人ではなく、責任ある立場の弁護士の方とお
話しさせてください。
2.原則として、親子の引き離し行為が、親子双方の権利侵害であり子どもへの虐待であ
ることを認識してください。
3.民法766条における面会交流の明文化の趣旨を踏まえ、子どもの養育が十分可能な
養育時間の配分という観点から、相当な面会交流の斡旋を行ってください(海外での基準
は年間100日が最低限の権利です)。
4.同居親の別居親への拒否感情を無制限に認めて、それを「子の福祉」や「子の利益」
と言い換えその後の親子関係を絶つことはやめてください。
5.直接的な面会交流に代わるものとして間接的な面会交流(手紙や写真の送付など)は
むしろその後の親子交流を困難にします。間接交流は養育時間としての面会交流にあたり
ません。「その他の交流」の解釈として、間接的な面会交流を認める斡旋をしないでくだ
さい。
6.再婚養子縁組を理由にして親子交流を断つ斡旋は即刻やめてください。
7.子どもとの面会を取引材料にしたり、子の奪い合い紛争において法的に優位に立つた
めの既成事実を作るための子の連れ去り行為を弁護士がなしたことが明らかになった場合、
日弁連としてどのような対処をするか、明らかにしてください。
回答は1月後に電話連絡の上、直接受け取りに上がります。(担当 宗像 充)