離婚で別居した親子らの面会交流の法整備が不十分なため、憲法が保障する基本的人権が侵害されているとして、10〜20代の子ども3人を含む男女17人が国に1人10万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(成田晋司裁判長)は28日、「立法措置が必要不可欠とは言えない」として請求を棄却した。原告側の代理人弁護士は「控訴を検討したい」としている。
原告側は「面会交流権」が憲法上保障されていると主張したが、判決は、権利の具体的な内容が明らかではなく、実現には相手方の対応が必要となることから「個人の人格権や幸福追求権として保障されると解することには疑問がある」と判断した。
民法で「父母の協議によって定める」などとした現行制度について「子は発達の途上にあり、単独で面会交流の当否を判断することは難しい」と指摘し、「合理性を欠くとは言えない」と結論付けた。
同種の訴訟で子どもが原告となったケースは初めて。原告17人のうち1人は重複した提訴だとして却下された。
◆原告「面会交流きちんと保障される制度を」
判決を受け、原告の別居親らは都内で取材に応じ、「残念な結果だが、控訴して最後まで闘いたい」と決意を新たにした。法制審議会(法相の諮問機関)の部会で現在、面会交流の機会を確保する方策などが検討されており、法改正の必要性も訴えた。
「夏の間、3人の裁判体で悩みたいと思う」。代理人の作花知志弁護士によると、今年8月に訴訟が結審した際、裁判長からこう伝えられた。さらに離婚後の単独親権制度の違法性を争った訴訟の東京高裁判決(昨年10月)では、親による子の養育は親と子の双方にとって「人格的利益」との見解が示されていたこともあり、前向きな判決に期待していた作花弁護士は「逃げ腰で非常に残念だ。立法に向けた動きがある中、司法がリードして法改正の必要性を示すべきだった」と残念がった。
産後うつ病と診断された直後に家を追い出され、長男との別居を強いられた原告の40代女性は、面会交流の履行が保障される制度の創設を切望する。
女性は、家裁の面会交流審判で月1回の面会と年3回の宿泊面会などが認められたものの、元夫らの意向で自分の実家での宿泊などがかなわず、月1回の面会にも元夫の同席が続いている。
「審判で決まった内容を守らなくても罰則もなく、母親なのにどうすることもできない。面会交流の履行がきちんと保障される制度にしてほしい」と願う。(奥村圭吾)